介護士の初任給のリアルな額をシミュレーション!施設・業態でこんなに違う

介護士の平均給与(勤続年数別)を示すグラフの画像

データ参照:厚生労働省『介護従事者処遇状況等調査結果』2018年

(文字が小さくてすみません。スマホの方は拡大してご覧ください。)

厚生労働省の調査による介護職員の勤続年数別の平均給与です。介護士の初任給を知るうえでは、勤続0年目の給与を参照します。

介護職は、勤続0年目の給与が非常に低いことが分かります。グラフ中の斜めの赤い線はトレンドラインですが、勤続0年目はトレンドを大きく下回っています。

しかし、それでもこの厚生労働省の調査結果の給与水準は、現実リアルより高い水準に見えます。(実際に私が初任給でもらった給料よりもはるかに高いです。)

そこで、もっと現実に近い調査結果を出している介護労働安定センターのデータを基準にして、介護職の平均給与を補正してみました。

すると、介護施設の業態ごとの平均給与が、現実に近い値で出てきました。

この記事では、介護士の初任給について解説します。

介護士の初任給(厚生労働省)と手取り

介護士の初任給(施設・事業所別)を示すグラフの画像

データ参照:厚生労働省『介護従事者処遇状況等調査結果』2018年

厚生労働省の調査(2018年)の結果における、勤続0年の介護職員の給料です。

つまり、初任給も含まれる時期の平均給与です。さらに厚生労働省のデータで見逃せないのは、介護施設の業態によって給料に差がある点です。

このデータでは、介護職員の初任給の平均給与は238,740円です。

でも、実際の給料より、ずいぶんと高いような気がします。

私のお給料はもっと低いです。

介護労働安定センターの平均給与をもとに補正する

介護労働安定センターが出した介護の一般労働者の所定内賃金(月給のこと)のほうは、実際の介護現場に近い平均給与となっています。

だだ、残念なことに介護労働安定センターのデータは、全体的な平均給与しかありません。つまり、介護施設の業態別の給料が出ていないのです。

そこで、介護労働安定センターの平均給与を基準にして、厚生労働省の介護施設の業態別の給与データを補正してみることにします。

  • 介護労働安定センターの平均給与(全年代・2018年):234,873円
  • 厚生労働省の平均給与(全年代・2018年):295,640円

厚生労働省のデータは、現実の給料とはかけ離れているように感じます。

厚生労働省の現実離れした値と、介護労働安定センターの現実に近い値の差を乖離率として求め、厚生労働省の介護施設の業態別の給料に当て込むわけです。

すると、介護職員のリアルな初任給が出てきました。

介護士の初任給(現実値)と手取り

介護士の初任給(施設・事業所別)の補正値を示すグラフの画像

介護職の初任給(現実値)
月給(円) 手取り(円)
平均 189668 158956
介護老人福祉施設 192846 161984
介護老人保健施設 193156 162294
介護療養型医療施設 184187 155038
訪問介護事業所 201403 168908
通所介護事業所 173422 146063
認知症対応型共同生活介護事業所 187071 156437

介護労働安定センターの値を基準にして補正した介護士の初任給は、189,668円です。

手取りは、地域によって税額などが違うため、東京都の40歳以下の介護士としてシミュレーションしています。

介護士の初任給および1年目の給料は、他の業界とくらべても低い水準であることがわかります。

でも、私がもらった初任給とすごく近い数字です。

ですよね。介護労働安定センターの調査結果が優れているおかげです。

介護士の平均給与と手取りについては、こちらの記事で解説しています。

介護職員の初任給が低い原因は、続かないから

介護職員の初任給は、勤続2年目以降の介護職員の給与トレンドから、大きく下回っています。

この原因は、端的に言うと「続かないから」です。

続かないなら、続けてもらうために給料を高くすれば良いのでは?

そうもいかないのが、介護業界の難しいところなのです。

介護施設側(経営側)が介護職の給与支給を増やせない原因は、

  • 給料に関わりなく、本人にとって介護労働がキツければ辞めてしまう。
  • 無資格でも就業できるため、就業志望者が途切れない。

という、介護施設側の心理にあります。

団塊世代の高齢化によって、介護を必要とする人口が急増しています。そのため、介護業界は人が足りなくて常に求人を行っています。

無資格でも就業できる介護業界には、次から次へと就業志望者が入ってくる状況です。(ただ、人が足りないので介護施設同士で就業者の取り合いにもなっています。)

こうなると介護施設側は、給料が低くても就業志望者が途切れないため、給料をわざわざ多くは払いたくない心理になっていきます。

給与支給を増やしても、介護労働のキツさに耐えられなければ結局、辞めてしまうのが介護労働の現実なのです。

労働者側が労働力を安売りする市場ができているとも言えます。

たとえ初任給が低くても続けられる環境が大切

新人介護職員に続けてもらうためには、たとえ初任給が低くても、働きやすい職場環境を整える努力を施設側がするべきです。

  • 介護職員のストレスをケアする体制を整える。
  • 新人教育を熟練者に任せるだけではく、施設側でも教育する。
  • 環境を悪くしがちな職員には、施設側が動いて指導する。

せっかく入ってきた新人介護職員が辞めてしまうのは、介護労働がキツイことが原因なだけではありません。

給料が低いことを発端にしたストレスから、職員同士の関係が悪化して、働きにくい環境になってしまっていることがあります。

「分からないことを聞きたい」と思っても、先輩に「役に立たない」と言われるのが怖くて、聞けない。

ストレス発散のつもりなのか、新しく入ってきた職員にとにかくキツく当たる熟練職員がいる。

こういった介護現場にはびこる悪い芽を、施設側が動いて摘んでいかないと、せっかく初任給の低さにも納得して入ってくれた新人職員は定着しないでしょう。

初任給より、派遣の給料の方が高い場合がある

とくに地方などの介護施設によっては、初任給が15万円程度のところがあったりします。

これほどの初任給なら、派遣労働の給料の方が高くなります。

私が介護の正職員を辞めて、派遣労働に切り替えた動機のひとつがこれでした。派遣の方が給料が高い。

厚生労働省の調査結果によると介護派遣の時給の平均は1,110円です。全労連の調査結果では1,104円です。

1,100円 × 8時間 × 20日 = 176,000円

派遣先の施設によりますが、特養・老健・訪問介護は時給が高い傾向にあります。夜勤ができる施設ならもっと時給単価が高く、給料も高くなります。

正社員にこだわる必要はないと感じました。

介護派遣のメリットは他にもあります。

介護派遣として働くメリット

  • 残業が無い:定時で終わります。残業になった場合はきっちり支払ってもらえます。
  • 時間を作れる:介護職で給料をあげるための手段には資格取得があります。派遣は勉強時間を作りやすいです。
  • 嫌なら辞めれる:派遣契約期間(3ヶ月)を目途に辞めて、他の施設に再派遣してもらえます。
  • 職場を選べる:最大のメリットだと思いました。正社員として続けるために、派遣として実際に働いてみるのが賢明です。

まとめ

  • 介護職は、勤続0年目の給与が非常に低い。しかし、厚生労働省の調査結果の給与水準は、現実リアルより高い水準に見える。
  • 厚生労働省のデータでは、介護職員の初任給の平均給与は238,740円
  • 介護労働安定センターの値を基準にして補正した、介護施設の業態別の介護士の初任給は189,668円
  • 新人介護職員に続けてもらうためには、たとえ初任給が低くても、働きやすい職場環境を整える努力を施設側がするべき。