介護士の給料が安い理由には、業界自体の収益性や介護報酬、専門性の問題などがあります。
私が介護の仕事をしていたときにもっとも疑問だったのは、専門性の部分です。
誰でもできる仕事
のように見られている気がずーっとしていました。施設職員の方からそういう扱いをされている気がしたこともあります。
介護士の給料が安い理由は、この意識によるところが大きいと感じます。
この記事では、介護士の給料が安い理由について解説します。
介護士の給料が低い理由
- 介護業界の収益性が低い
- 介護報酬に上限がある
- 介護職は無資格でも就業できる
- 介護職に就きたい人が絶えない
介護業界の収益性が低い
介護業界の収益性が低いのは、そもそも人がお金を払いたくないところを担う業界であるところにあります。
私の考えですが、人は自分のためにはお金を使うが、人のためには出費を惜しむものです。これは人の性なので仕方ありません。
介護や保育のように、生産性の低い人の面倒を看るサービスにはそもそもお金が落ちにくい性質があります。
たとえ親の介護であっても、できるだけ安く済ませたい。
そのため、介護業界自体がケチケチした体質を持っています。多くの介護施設では、経営の健全性を確保するために、内部留保率を高めざるを得ない状況にあることも事実です。
内部留保率が高い介護施設ほど、介護士に給料として還元する額が少なくなります。
それで、介護士の給料が低くなってしまいがちなのです。
介護業界は内部留保率が高い
内部留保とは、介護施設が経営安定のために保留しておく資金のことです。厚生労働省の調査では、介護業界の内部留保率は高いことが明らかになっており、特別養護老人ホームの1施設あたりの内部留保額は1.6億円という結果でした。
出典:厚生労働省「特別養護老人ホームの内部留保について」
介護報酬に上限がある
2021年に介護報酬が改定され、1.2%の引きあげがありました。
とはいえ、要介護度によってサービス内容と介護報酬が決まるので、介護施設の経営努力だけでは給料を変えることが難しいという事情があります。
介護報酬は、要介護度ごとに毎月の支給限度額が決められています。
限度額を超えるサービスを受ける場合は、利用者が超過分を負担することになります。
そのため、利用者は限度額内の介護サービスにおさめようとします。
介護施設に支給される介護報酬が限られてくると、介護士に支払われる給料も安くなってしまいます。
介護報酬とは
介護保険が適用される介護サービスを行う施設に対して支払れる報酬です。報酬の1割は利用者が負担、9割は自治体の介護保険から支払われます。利用者の要介護度とサービスにかかる時間に、単価(10円単位)が定められています。
介護職は無資格でも就業できる
世間的に介護職は、誰でもできる仕事と思われている節があります。
必ずしも資格・スキルを必要としないため、介護の仕事には専門性が無いというイメージが付いているのです。
そのため、資格や経験を必要とする業界と比べると給与が低い傾向にあります。
介護職は無資格・未経験でも就業できるので、介護施設側にも「給料が安くても人材が集まる」という意識が充満しています。
介護職に就きたい人が絶えない
データ参照:公益財団法人 介護労働安定センター
介護現場の人不足感は年々、増加しています。
その原因は、同業他社との人材獲得競争が厳しいというものです。
人不足だと、給料の支給額を増やす傾向になるのでは?
そうなのですが、介護報酬の上限のせいでそうもいかないのです。
高齢化によって介護を必要とする人の数は増加しており、今後も介護士の需要は増えています。
こうなると慢性的な人材不足となり、無資格でも就業できる介護職に就こうとする人が増えてきます。
介護職に就きたい人が増えると、介護士の給料が低くても人材が集まってくるという悪循環になります。
給料が安いことの弊害
給料が安いことで、現場では負のスパイラルが発生します。
私が働いていた施設でも陰口やいじめが絶えず、人が辞め、新人をいじめ…という悪い習慣ができていました。
- 給料が低いことがストレスになる
- ストレスを発散するために、職場にいじめが発生する
- 職員が辞める
- 残った職員の業務の負担が増える
- ストレスが溜まる
- ストレスを発散するために、またいじめが発生する
- また職員が辞める
これが、ぐるぐると繰り返されます。
介護士の給料が低いと、介護現場の労働環境の悪化につながることがわかります。
介護職を辞める主な理由は、給料が安いことを発端にした職員同士の関係の悪化が原因です。
給料が安いと辞める理由
- 毎日のように残業
- 休日出勤もたびたび
- 利用者の問題への対応
- 職員同士のいざこざ対処
給料が安いことによる負のスパイラルのなかにあっても、頑張る介護職員もいます。しかし、頑張る人ほど仕事の負担はすさまじいものです。
いつまで気持ちが持つかは人によりますが、いずれは「辞めたい」という気持ちが生まれるのも仕方ないと感じます。
私は何度も「逃げたい」という思いがよぎりました。
介護施設には、利用者のケアだけではなく、介護職員のケアの必要性もあるのです。
介護職員のケアもしてほしい
- サービス残業をさせない。
- 利用者の問題には施設が対応する。
- 介護職員同士の仲を手助けする。
- 働きやすい職場環境を整える。
介護施設は、給料が低い分を補うためにも介護職員のケアをして欲しいと感じます。
介護施設が、介護職員が抱える負担の片棒を担いでくれるだけで、介護職員の気持ちはずいぶんと楽になります。
たしかに、介護士の給料が安いということは、働く前から覚悟はしていました。
介護を必要としている人へのサービスにやりがいがあればいいと期待したから、給料の低さにはある程度納得しているところがありました。
しかし、給料の低さがこれだけの問題を生むことを、介護施設は理解するべきです。
介護職員のケアもできる介護施設は、人が残ります。
人が残る環境を作る努力をしないと、介護施設も競争に負けて淘汰されていくでしょう。
まとめ
- 介護業界の収益性が低いのは、そもそも人がお金を払いたくないところを担う業界であるから。
- 要介護度によってサービス内容と介護報酬が決まるので、介護施設の経営努力だけでは給料を変えることが難しい。
- 必ずしも資格・スキルを必要としないため、介護の仕事には専門性が無いというイメージが付いている。
- 介護職に就きたい人が増えると、介護士の給料が低くても人材が集まってくる。
- 介護施設は、給料が低い分を補うためにも介護職員のケアをして欲しい。